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(連載6/8)生活改善啓発などの普及実装化に関する研究に関して

武藤倫弘


一方、生活改善啓発など自ら実践できるがんを予防する方法を広報していくだけでは効果が十分でないことがわかってきました。科学的根拠が示されている研究成果などをホームページや論文、本などを用いて公表していっても、相手の現実の行動を促すことが出来なければ普及効果は少なくなることが判り、従来型のがん予防啓発活動手段での課題が見えてきました(お判りかと思いますが、興味のない人を振り向かせるのはとっても大変なのです。。。)。



実際、予防は医療従事者のみで解決できる課題ではなく、各種の関係者たち(ステークホルダー)とパートナー関係を築きあげ、共同して普及実装化する必要があることがわかってきました(我々の提案する生活習慣改善スマホアプリ「Green Chord」の開発はその一つの例といえるでしょう)。現地のキーパーソンと初期から話し合い、郷に入っては郷に従え、その土地ならではの風土慣習に合わせて微調整することが、普及を長続きさせるための重要なポイントであることがわかってきました。


社会環境的には実装化に必要な条件や環境整備などを調査し、健康に関する選択や機会の改善につながる地道な作業を進めなければなりませんし、個人に対しては生涯に渡ってがん予防情報を探し、利用するスキルや能力自体を高める(ヘルスリテラシーの向上)ための手助けをしていく必要があるでしょう。そしてその結果、個人を超えて家庭やコミュニティにまでがん予防の考え方が普及し、実装化していくことが期待されます。この様にヘルスプロモーションを社会システムに組み入れることは、がん予防に関する情報の普及実装化をさらに促進することでしょう。


次のコラムでは、がん予防を個人に委ねるためにも<何らかの制度の実現>が必要なことがわかって来た実状を踏まえ、「がんになってから治療を行う社会」から「がんにならない社会」へと社会を変えていくためには、新たに<攻めのがん予防>を展開する必要があることを述べたいと思います。そのため、まずは「がん化学予防剤の研究に関する進捗」を紹介します。


(注:エッセイは筆者の個人的考えを述べたものであり、所属組織の正式な見解ではないことを申し添えておきます。)

国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究部 室長


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