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(連載4/8)がん予防は、なぜビジネスに結びつかないのだろう?

武藤倫弘


<普段耳にする>がん予防関連サービスを皆さんはいくつ挙げることができるでしょうか?おそらくほとんど無いのでは?がん予防に関連するサービスが少ないのは、予防サービスを提供した時に、その名前に病名(疾患名)をつけることの出来るビジネスモデルと出来ないビジネスモデルがあることが関連します。予防の対象となる症状などが医療制度の対象ではない時でも、そこに「がん」という名前がつくと、そのサービスは突然医療制度の対象として扱われます。御覧ください、健康食品に「がん」と言う言葉の書かれた商品はないはずです(あるとしたらそれはまがい物です!)。



不思議に思ってほしいのは、「われわれがお金を出して受けることのできるがん予防サービスはありますか?」という問いに対し、本などを買って情報を得ること、そして人間ドッグなどでがん検診を受けること位しか積極的なサービスの享受がないことなのです。寓話でよく話題になる「お金で買えないもの」にはいくつかあると思いますが、実は<がん予防サービス>も「お金で買えないもの」の一つなのかもしれません。


自分ががんに罹るリスクがわかるのならば、その度合いによって自分のがん予防対策にお金を出しても良いのに、という感想を多く聞きます。しかし<がん予防サービス>をお金に換算ことが禁止されているのならば、企業が事業化(ビジネスモデル化)することは難しいでしょう。もちろん、公共性が高いならば収益が望めなくとも、公共事業として進めていくこともできます。しかし、行政的には前例がないものを当初から事業として行うのは難しいと思われます。<とんでも医療>として社会を騒がすがん治療やがん予防に関する詐欺を、皆さんも新聞や雑誌でよく目にされるのではないかと思います。


詐欺とまではいかないものでも、新聞や雑誌で目にするものの多くは研究レベルの話が中心で、皆さんがすぐに利用出来るサービスに直結する話はほぼないかと思います。科学的根拠に基づいたがん予防の新規事業化は経済の起爆剤になりえますが、研究レベルを本当に事業化できるのか?次回のコラムでは、さらに議論が深まるようにがん予防研究の進捗について述べていきます。


(注:エッセイは筆者の個人的考えを述べたものであり、所属組織の正式な見解ではないことを申し添えておきます。)

国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究部 室長


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