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がんの予防は「個人で頑張ってね」という感じを受けます

武藤倫弘


その他の病気同様、がんにおいても最も有効な対策は予防です。



しかし、がん予防のための社会制度はあるでしょうか?がんの予防に関しても、医療のようにしっかりとした制度(皆保険医療制度ですね)があると考えている方も多いかもしれませんが、実はほぼ無いといってよいのです。つまり現実にはがん予防対策は個人に委ねられているのです。我々国民は自発的にがん予防計画を自ら立てて実行する以外、ほぼ防御策はありません。もちろん、がんに対する防御策として、がん予防の指導をかかりつけ医や専門家などから受けたり、がん検診を受けたりすることはできます。問題はこれ位しか予防手段の選択肢がないことなのです。例えばがん予防の指導を受けるにしても、がん予防の指導ができる専門家が実際どの程度いるかは、甚だ疑問です。さらに近い将来、最近大流行のAIなどのIT技術の発展によって個々人のがん罹患リスク(どれくらいがんに成りやすいか)がかなり正確に予想されるようになっても、現状の社会制度の下では我々はがん検診をしっかり受ける以外の積極的な予防策を取ることができない可能性が高いのです。現在、がん検診の受診率は50%を切っていることを考えると、もう少し自発的にがん予防対策をとるように我々も頑張らなければならないとも言えます。このコラムの目的は<社会システムとしてがん予防に対して何かできないか、という議論を促すこと>ですので、次回のコラムでは、「がん予防が、なぜ社会制度に結びつかないか」へとお話を進めていきたいと思います。(注:エッセイは筆者の個人的考えを述べたものであり、所属組織の正式な見解ではないことを申し添えておきます。)


国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究部 室長


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