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「大丈夫」と伝える、その前に。ゲノムコンシェルジュLIVE #02「レアバリアントをどう伝える?」

執筆者の写真: グリーンコード
グリーンコード
12 時間前
読了時間: 10分

2026年10月23日、金曜日の夜。

第2回ゲノムコンシェルジュLIVEを開催しました。


今回のテーマは、「レアバリアントをどう伝える?」


ゲストにお迎えしたのは、聖路加国際病院で認定遺伝カウンセラーとして活躍されている鈴木美慧さんです。


今回は、GreenChordで実施している遺伝性乳・卵巣・膵・前立腺がん症候群の簡易スクリーニング検査(HBOPPC)、家族性高コレステロール血症の簡易スクリーニング検査(FH)(以下「レアバリアント簡易スクリーニング」)を中心に、検査結果をどのように受け止め、本人や家族に伝えていくのか、実際の医療現場でのご経験を交えながらお話しいただきました。


後半は、参加者のみなさんと一緒に事例を考えるケーススタディも。

「こう伝えればいい」という正解を探すというよりも、伝え方を考えることで、かえって問いが深まっていく。そんな1時間となりました。



レアバリアントの簡易スクリーニングで、何がわかる?


まず、今回のテーマである「レアバリアント」について、少しだけ。

私たちのDNAには、一人ひとり異なる文字の並びがあります。その違いを「バリアント」と呼びます。


バリアントにはさまざまな種類があり、その中には、特定の病気の発症リスクに大きく関わるものもあります。


GreenChordのレアバリアント簡易スクリーニングでは、FHやHBOPPCに関連する特定の遺伝子の病的バリアント*などを対象に、唾液を用いたマイクロアレイ検査を行っています。


*病的バリアントが検出された場合には、別の方法による確認試験や専門家によるレビューを経て、認定遺伝カウンセラーまたは医師から結果の意味や今後の選択肢について説明を受けられます。ただし、簡易スクリーニングは診断を確定するものではなく、必要に応じて専門医療機関で診断目的の遺伝学的検査や医学的評価を行います。


一方で、簡易スクリーニングは、すべての病的バリアントを検出できる検査でも、確定診断を行うための検査でもありません。


検査の対象となるバリアントには限りがあり、検出が難しいものもあります。そのため、病的バリアントが検出されなかった場合でも、遺伝的なリスクを完全に否定できるわけではありません。

では、こうした検査の特徴や限界を、受検した方にどのように伝えればよいのでしょうか。

結果を正確に説明することはもちろん大切です。

けれど、説明を聞いた方がどのように受け止め、その後の健康管理や必要な受診につなげていくのか。そこまで考えることも、結果を伝えるうえで欠かせない視点です。



50%という数字の、その先にあるもの


常染色体顕性遺伝(優性遺伝)では、親が原因となる病的バリアントを持っている場合、子どもがそれを受け継ぐ確率は、一般に50%とされています。この50%は、子どもが病的バリアントを受け継ぐ確率であり、病気を発症する確率そのものではありません。


数字だけを見ると、比較的シンプルな話に思えるかもしれません。

けれど、実際の家族の姿は、数字だけでは語りきれません。


病的バリアントを受け継いでいても、必ず病気を発症するとは限らないこと。本人に目立った症状がなくても、家族の中に同じバリアントを持つ人がいる可能性があること。

例えば、HBOPPCに関連する病的バリアントは、女性の乳がんや卵巣がんをきっかけに見つかることがあります。一方で、男性もバリアントを受け継ぐ可能性があり、本人に症状がなくても、家族の健康について考えるきっかけになる場合があります。

FHでも、本人のコレステロール値や家族歴をきっかけに、血縁者の健康について考えることがあります。


一人の検査結果から、家族の健康について考えることになる。

遺伝学的検査は、本人だけで完結するものではないのかもしれません。


だからこそ、結果を正確に伝えるだけでなく、その情報が本人や家族にとってどのような意味を持つのか、考えていく必要があります。



あなたなら、この方にどう伝えますか?


後半のケーススタディでは、簡易スクリーニングで病的バリアントが検出されなかった場合、どのように説明するのかを参加者のみなさんと考えました。


今回考えたのは、母親が乳がんを経験している40代女性のケースです。本人はHBOPPCの簡易スクリーニングを受け、結果は「検出なし」でした。


しかし本人は、「母の乳がんに関係する遺伝的なものを、私は受け継いでいないということですか?」「私の子どもたちも心配しなくてよいのでしょうか?」と質問します。


この方に、あなたならどう伝えますか?


あなたなら、この方にどう伝えますか?

例えば、こんな言葉をかけたとしたら。

「検出されなかったので、大丈夫ですね。」

そう伝えることで、少し安心してもらえるかもしれません。


でも、検査で見つからなかったことと、病気のリスクがまったくないことは同じではありません。

今回の簡易スクリーニングでは、対象となる遺伝子のうち、一部のバリアントを調べています。対象外のバリアントや検出が難しいバリアントもあるため、検出されなかったという結果だけで、遺伝的なリスクがないと判断することはできません。


また、病的バリアントが検出されなかった場合でも、家族の病歴などから遺伝的なリスクが気になる方や、不安が強く残っている方もいます。その場合には、遺伝カウンセリングや関連する診療科への相談が選択肢となります。検査結果だけで相談の必要性を判断するのではなく、本人の状況や希望に合わせた支援を考えることが大切です。


では、どう伝えればよいのでしょう。参加者の方にも伺いました。


必要以上に不安を与えたくない。

検査結果だけで安心し、必要な健診・検診をおろそかにしないように伝えたい。

そのどちらも、相手を思う気持ちから生まれるのかもしれません。


参加者のみなさんからも、それぞれの立場や経験を踏まえた意見が出ました。


ゲストからのフィードバックを通して改めて考えさせられたのは、過度に安心させず、不安をあおらず、検査でわかることとわからないことを相手に合わせて伝えることの大切さです。



家族に伝えるって、どういうことだろう


ここからは、鈴木美慧さんの臨床経験を踏まえたお話から考えていきます。

今回取り上げたFHとHBOPPCでは、同じ遺伝に関する話であっても、その後の対応には違いがあります。


FHでは、LDLコレステロール値や家族歴などを確認し、必要に応じて早期の受診や治療につなげることが、将来の心血管疾患リスクを下げるうえで重要です。


一方、HBOPPCでは、病的バリアントがあっても、がんの発症時期や発症の有無を個人ごとに正確に予測することはできません。年齢や遺伝学的背景などに応じて、検診や予防、専門医への相談について考えていく必要があります。

だからこそ、病気の特徴や必要な対応に合わせて説明することが欠かせません。

そして、もうひとつ考えたいのが、家族とのコミュニケーションです。


本人の検査結果をきっかけに、家族にも検査や受診を勧めたほうがよい場合があります。

でも、家族に伝えることは、単に「あなたも検査を受けてね」とお願いするだけではありません。


本人は家族に何を伝えたいと思っているのか。

家族に情報を伝えることが有益な場合でも、いつ、誰に、どこまで伝えるかは、本人の意思や家族関係に配慮して考える必要があります。

誰から、どのタイミングで、どんな言葉で伝えるとよいのだろうか。

正しい情報を伝えることはもちろん大切です。それと同じくらい、情報を受け取る人の気持ちや、家族との関係にも目を向けたいところです。

検査結果を知ったことが、自分の健康だけでなく、家族の健康について話し合うきっかけになる。

そんな会話のはじまりを支えることも、結果を伝える大切な役割なのだと、ゲストのお話を聞いて感じました。



相手を見てから、言葉を選ぶ


参加者のみなさんからは、アンケートを通して、結果説明の後のフォローについて具体的な事例をもっと知りたいといった声も寄せられました。


同じ説明をしても、受け止め方や理解の仕方は人それぞれです。

ずっと病気を心配している人もいれば、思いがけない結果に戸惑う人もいるかもしれません。すぐに行動したい人もいれば、まずは気持ちを整理したい人もいるでしょう。

目の前の人が何を理解していて、何を心配し、どのような情報を必要としているのか。

それを確かめながら、必要な情報を補い、次にできることを一緒に考えていく。


「大丈夫ですよ」と伝えることが、いつも最善とは限らない。

かといって、リスクを詳しく説明することだけが、誠実な対応でもない。

今回の学びは、レアバリアントの簡易スクリーニングだけに限った話ではありません。

コモンバリアントを用いた疾患リスクの結果を伝えるときにも、同じことが言えるのではないでしょうか。


検査の種類や仕組みが違えば、わかることや結果の解釈も異なります。それでも、検査の限界を理解し、相手の受け止め方を確かめながら、次の行動につなげるという姿勢は共通しています。


ゲストのお話や参加者との事例検討を通して、結果説明は一方的に情報を届ける時間ではなく、相手との対話を重ねる時間でもあるのだと、改めて感じました。



ところで、参加型LIVEは参加しやすかった?


ここで少し、運営側の振り返りも。

今回の参加者は15名。カメラをオンにして参加された方は3名、音声のみで参加された方は12名でした。

カメラをオンにしてくださった方からは積極的な発言もあり、事例検討が深まる場面もありました。ありがとうございました!

一方で、音声のみでも参加しやすいことは、オンラインイベントのよさのひとつです。

「参加するなら、カメラをオンにしないといけないのかな」

「発言を求められたら、うまく答えられるだろうか」

もし、そんな気持ちが参加のハードルになっていたら、少しもったいない。

もちろん、耳だけの参加も立派な参加方法です。顔を出さずに話を聞き、自分なりに考えることにも、十分に意味があります。

一方で、参加型のよさをもっと生かしたいという思いもあります。

例えば、チャットでひと言感想を共有する。選択肢から回答する。匿名で意見を寄せる。

カメラやマイクを使わなくても、参加者の考えが見える仕掛けがあれば、もっと一緒に考えられる場になるかもしれません。

今回、運営側として気づいたこともありました。

スマートフォンから参加されている方にとっては、LIVEの画面を切り替えてQRを読み取りアンケートに回答するのも、ひと手間だったかもしれません。

……アンケートのURL、チャットにも載せておけばよかったですね。。。

画面オンの人数を増やすことが、参加しやすいLIVEにつながるのか。

それとも、顔を出さなくても安心して考えを共有できる工夫こそが大切なのか。

運営側としても、まだ答えを探しているところです。

参加者のみなさんにとって、どんな形なら無理なく参加でき、意見を交わすことができるのか。

これからも試行錯誤しながら、知識を学ぶだけでなく、参加者同士で考えを深められる場をつくっていきたいと思います。



「受けたこと」を、会話のはじまりに


今回のLIVEを通して、ひとつの答えが出たわけではありません。

必要な情報を知り、自分なりに考え、誰かと話し、少しずつ次の行動につなげていく。

そして、そのための伝え方や支え方を、医療や健康支援に携わる人たちが一緒に考えられるように。

ゲノムコンシェルジュLIVEでは、これからもゲノムや遺伝に関するテーマを取り上げながら、知識を学ぶだけでなく、実際にどう伝え、どう支えるのかを、みなさんと一緒に考えていきます。


ご参加いただいたみなさま、そして貴重なお話を届けてくださった鈴木美慧さん、ありがとうございました。


次回も、どうぞお気軽にご参加ください。


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